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第4回 後編 Kanoco / ファッションモデル

溢れるほどの好奇心と行動力で、夢の職業に辿り着いた〈前編〉。
座右の銘は「意思あるところに道は開ける」という彼女が、
愛するひとや新しい家族と軽やかに生きる、等身大の魅力をお届けします。

無理をしないで、正直に生きる
悩んだときは日記に書いて
心の中から取り出しておくと
気持ちがすっきりします

生きることに対するおおらかさと謙虚さ。
Kanocoさんと話していて感じられるのは、潔く心地いい二面性だ。

「ひとと打ち解けるのは、すごく苦手。ちょっと仲のいい友達というのはいなくて、狭く、深く、長く続く仲間に恵まれています。仲良くなると、家族みたいになるひとが多いかな。まわりに頼らず、ひとりで頑張ってしまうところは、小さい頃から。できるだけ迷惑をかけたくなくて、自分で解決する方がきもちがラクなんです」

そんな彼女が結婚したのは、25歳のときだった。

「モデルの仕事に就いてよかったことは、たくさんありますが、一番は撮影で夫に出逢えたこと。ひとことでは言い表せないのですが、懐が広く、神秘に溢れていて、常に広がりを感じる、宇宙みたいなひと。ハレとケでいったら、夫はハレをめちゃくちゃ大事にするロマンティックなひとでもあります。私はケのタイプですが、この先もずっと一緒に生きたいと思うと、人生が短すぎて悔やまれます」

そう笑顔で素直に話す軽やかさは、モデルとして、母として、健やかに生きていくための気づきを教えてくれる。コロナ禍には、ずっと願っていた新しい命を授かった。

妊娠が分かったときは、夫とすごく喜びました。本の出版が控えていたので、出産10日前くらいまで原稿の執筆と撮影をしていましたが、幸いつわりもなく、元気でハッピーな妊娠期間でした。日に日におなかが大きくなる幸せをたくさん感じましたし、夫とドライブしたり、朝ごはんを食べに行ったり、ふたりだけの時間をたくさん楽しみました。それもよかったです」

子どもが産まれてからは、我が子が可愛すぎて、すべてが変わったという。

「暮らしは何もかも変化し、子ども中心の生活になりました。仕事への向き合い方は変わらないけれど、必然的に時間の制限があるので、ぐっと濃厚なひとときを過ごしている気がします。いっぱいいっぱいにならないように、好きな服を着て息子と散歩に出かけたり、気分転換もしています」

一日の中にささやかな楽しみがあることで、心身が整っていくことを実感。初めての子育てを通して、だれかに頼ることの大切さも知った。

「産後2〜3カ月で、国立に住む夫の両親や実家の母に来てもらったりして、ずいぶん助けられました。仕事もできるだけやりたいと思っていたけれど、子どものためにちょっと置いておこう、みたいなことが少しずつできるようになりましたね」

子育てしながらも、センス溢れる日常の投稿が素敵なkanocoさんのインスタグラム。日常にささやかなしあわせを見つける柔らかな感受性を宿していたり、目の前で起きたことに素直に感動し、その想いを丁寧に発信している。慌ただしい日々の中で、ごきげんでいられる秘訣は?

「無理をしないで、正直に生きること。出産前は『家事も完璧にやりたい』と思っていましたが、今は諦めることも学びました。息子が1歳になり、保育園にお世話になり始めたので、自分と向き合う時間を作るようにしています。美味しい野菜を買いに行くと、家事もやる気になったり。お気に入りの喫茶店で甘いおやつをいただきながら日記を書くのは、自分にとって心身を整える特別な時間です。悩んだときは紙に書いて、心の中から取り出しておく。記録することは自分との会話、頭の整理みたいなもの。最近、初の運動も始めました」

内なる声に耳を澄ませ、記録し、自分と向き合っている彼女の暮らしは、自然と心身が喜ぶ選択をし、よりよい今、そして未来を育んでいるように感じる。

「憧れのひとは両親。冗談を言い合ったりもしますが、仕事に対しても、家族に対しても、真面目に生きているんです。母は愛情深くて、涙もろくて、すぐ泣く。毎日ご飯を作ってくれました。父は優しくて、見返りを求めずになんでもやる、本当にいいひと。今はボランティアに行ったり、実家の庭で畑を始めたので、収穫した野菜を母が料理することも。この夏は、育ったピーマン、ゴーヤ、大葉を送ってくれました。私たちは小さい頃、よく兄妹喧嘩をしていたけど、父と母はずっと仲良し(笑)。今でもふたりでデートしたり、旅行に行ったり、楽しそうに暮らしています」

そんなご両親から譲り受けたのは、どんなことだって楽しみ上手なところ。

「慌ただしい日々の中で、しあわせを感じるのは、愛する家族が笑っているとき。息子が生まれてから、夫とよく『できるだけ長生きしたいね、彼がいる世界を一緒に生きたいね』と話しています。こんなに可愛いとは思わなかった。つらいこともあるだろうけど、彼が楽しかったらいいなと思います。実家の両親みたいにずっと彼の一番の味方でいたいです。あとは夢中になれることをひとつでも見つけてくれたらいいですね」

母となり、かけがえのない家族が増えた。彼女にとって家族は、安心感と温もりを感じられる生命そのものだ。

「家族も仕事もどちらも大切にすることで、両方によい影響があるように頑張りたいです。
仕事を大事にしていたら、家族も大事にできると思うんです」

一日一日を大切にし、生きることへの感謝を忘れない。前を向いて生きる姿は美しい。
迷い、悩み、楽しむ中で見出された滋味溢れる人生は、ささやかな喜びの枝葉でいっぱいだ。
彼女の“好き”が凝縮された愛おしい日々から紡がれるストーリーに、これからも耳を傾けていきたい。

Kanoco

兵庫県生まれ
ファッションモデル

ファッション・カルチャー誌など多数の雑誌を中心に、広告・MVなど幅広い分野で活躍する一方、2021年6月に男の子を出産。母となり、子育てしながら日々のごはんを紹介しているインスタグラムも人気。彼女のファッション、ビューティ、ヘア、お料理、大好きなしろくまの話など、大切なものやことを書き綴ったオール私服&私物のフォトエッセイ『かの・この・はなし』(双葉社)は、好評発売中。暮らしが愛おしくなるような一冊です。今回は、お気に入りの珈琲店『茶亭 羽當』にてお話を伺いました。

Photo:Shinnosuke  Yoshimori
Edit&Text : Narumi Kuroki (RCKT/Rocket Company*)
Location:Coffee Shop Chatei Hatou

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