夏の終わりのザリガニパーティー
ザリガニの赤、添えられたレモンの黄色、そして香り高いディルの緑。
フィンランドには、そんな色鮮やかな食卓を囲んで8月に開催される伝統行事があります。
その名もザリガニパーティーというスウェーデン発祥のお祭りで、夏の終わりにザリガニを食べながらお酒を飲むイベント。
日本の8月は夏真っ盛りですが、フィンランドでは少しずつ秋の足音が聞こえはじめる、夏最後の月です。
誰もがずっと待ち望んだ、見るものすべてが美しく輝く季節、夏。
そんな最高の季節がもうすぐ去ってしまうさみしさを紛らわすかのように、やがて恋しくなるお日さまの光を屋外で浴びながら、仲間たちとわいわい過ごすのです。
わたしは毎年お友達とこのザリガニパーティーをしていて、今年は我が家のバルコニーで開催しました。
ザリガニモチーフのガーランドの下に座り、ザリガニ柄のエプロンをつけるともうそれだけで気分が上がります。
食卓には、主役のザリガニの他にも数種類のパン、スカーゲン、サラダなどが並び、「キッピス!」と乾杯をしたらパーティーの始まりです。
ザリガニは、塩水で茹で、ディルなどの香草の風味がつけられたもの。
スカーゲンとは甘エビのマヨネーズ和えのことで、お料理上手なフィンランド人のお友達に教えてもらったレシピで作ったところ、大好評でした。
毎年殻の剥き方を忘れてしまうのですが、お友達のひとりが優しくレクチャーしてくれます。
まずハサミの部分を付け根から取り、ザリガニ専用のナイフで先端に詰まった身を取り出し、そして頭を取り、胴を開いて身を取り出します。
頭の部分はお皿の端に並べ、いくつ食べたか一目でわかるようにするのが大切なポイントだそう。
なかなか根気のいる作業ですが、全長約10cmのザリガニ一匹から取れる身の量はわずか5cm程度。
正直、手間と食べられる身の量は釣り合いませんが、だからこそ仲間との会話に花が咲き、お酒が進む楽しいパーティなのです。
香草の風味がよく効いたザリガニはカニともエビともまた違ったおいしさで、なんと言っても剥く手間が掛かっているからこそ、そのおいしさが倍増します。
わたしが好きなのは、バターを塗ったパンにディルと一緒に何匹分か乗せていただく食べ方です。
食後のデザートに手作りブルーベリーパイとコーヒーをいただきながら会話は続き、残りの夏の予定をみんなで立てました。 まだまだ今年もすてきな夏の思い出は増えそうです。
きつね
ヘルシンキにあるカフェのマーケティング担当者およびフリーランスのライターとして活動するかたわら、ブログでフィンランド生活やおすすめカフェなどについて発信している。
お日さまとコーヒーと深夜ラジオがすき。