フィンランドの街中がにぎやかなお祝いモードに染まる日、ヴァップ
イースターを過ぎてから毎日少しずつ気温が上がり、分厚く大地を覆っていた雪もすっかり溶けてしまいました。
長い長い眠りから目覚めた草花が、寝ぼけ眼をこすりながら美しい花や蕾を芽吹かせ、景色に彩りを添えています。
自然も、そしてわたしたち人間も、浮き足立つこの季節。
毎年5月1日のメーデーは、フィンランドでは「ヴァップ」というとても大切な祝日です。
クリスマスや夏至祭はお店も閉まり街は空っぽになってしまうのですが、ヴァップは一年でいちばん街中が人で溢れかえり、にぎやかなお祝いモードに包まれる日なのです。
ヴァップは春の到来と、学生そして労働者のお祝いの日。
この日は誰もが大騒ぎし、お酒をたくさん飲んではしゃぎます。
お祝いは、前日4月30日の「戴冠式」から始まります。
これは、ヘルシンキでは中心地にあるハヴィスアマンダ像を学生のグループがよく洗い、学生帽で彼女を「戴冠」させる儀式。
広場を埋め尽くすほど集まった人たちは、それと同時に学生帽を被り、この瞬間から街中ではたくさんの学生帽を被った老若男女に出会うことができます。
この白い学生帽はフィンランドで高校を卒業するともらえるもので、汚れていればいるほどクールとされていて、お友達は若い頃、帽子にシャンパンを注いで飲んだものよと笑いながら教えてくれました。
街中で見かける、老夫婦が年季が入った学生帽を被って仲良く歩く姿に、毎年とても心温まります。 そしていよいよヴァップ当日になると、海沿いの公園に集まって合唱団が歌うフィンランディアを聞き、ピクニックをします。
寒かろうと、雨が降ろうと、毎年必ずこの公園でシャンパン片手にお祝いをします。
テーブルやテントを準備して、少しおめかしして集まっている気合十分なグループもたくさん見受けられました。
フィンランドの人たちにとって、待ちに待った春が来た喜びは、何にも代えがたいほど大きなものなのです。
ヴァップのお祝いに欠かせない飲みものと食べものがあります。
まずは、「シマ」という砂糖・水・レモンを発酵させた甘いレモネード。
お家で簡単に作ることもできて、レモンの爽やかな風味にヴァップにしか飲めないという特別感が加わり、より一層おいしくさせます。
そして、甘いドーナッツ「ムンッキ」と、絡まった毛糸のような形の揚げ菓子
「ティッパレイパ」。
そこに風船とカラフルな紙リボンも合わせれば、お祝いの準備は万端。
コロナウイルス流行のため、過去2年間ヴァップの集会ができなかったフィンランドでは、今年の盛り上がりは過去最大と言えそうです。
フィンランドの最高に美しい季節の到来を、全身でお祝いしましょう。
ヒュヴァー・ヴァップア!
きつね
ヘルシンキにあるカフェのマーケティング担当者およびフリーランスのライターとして活動するかたわら、ブログでフィンランド生活やおすすめカフェなどについて発信している。
お日さまとコーヒーと深夜ラジオがすき。