第3回 やわらかな光がつつみこむ、パステルカラーのお部屋
春の雪がひらひらと舞うある日、ヘイディ・ヴァルコラさんのお宅にお邪魔してきました。
コンセプトデザイナーとして広告会社で働きながら、イラストレーターとしてもご活躍されているヘイディさんは、旦那さまと5歳になる娘さんと一緒にヘルシンキで暮らしています。
それぞれのお部屋を彩るパステルカラーの壁が印象的ですが、それでも甘すぎないのは、程よく取り入れられたダークカラーがスパイスになっているからかもしれません。
お料理やお菓子作りが大好きなヘイディさんのいちばんのお気に入りの場所は、キッチン。
「カウンター越しに、ソファでぴょんぴょん飛び跳ねたりして遊んでいる娘の姿を見守りながらお料理するのが、とてもしあわせなひとときなの。」
キッチンのデザインは、戸棚は旦那さまが選んだ白、ドアノブ部分はヘイディさんが好きなゴールドと、夫婦で一緒に作り上げました。
アルヴァ・アアルトが少年時代を過ごしたことで有名なユヴァスキュラご出身のヘイディさん。
アアルトデザインの家具でまとめられているダイニングを、カーテン越しの光がやさしく包み込みます。
ラプアン カンクリのリネンテーブルクロスがお部屋全体のやわらかな雰囲気にとてもよく合い、有田焼のプレートやフィンランド人作家が手がけた器とも相性よく馴染んでいました。
リビングには、旦那さまのお祖母さまが描いた絵や、娘さんが初めて描いてくれた似顔絵など、家族の絆を感じるものが大切そうに飾られています。
たくさんの本や小物たちの中には、よく見ると、村上春樹の小説やこけしといった日本のアイテムも。
数回東京に出張したことがあり、旅行で再び訪れられる日を夢見ているそう。
「日本人の美的感覚や、細部まで気を配る繊細さに感銘を受けて、それが作品作りにも影響するようになったと思うわ。」
子ども部屋にもご自身の作品である身長計のタペストリーが飾られています。
最近は日本の文具ブランド向けにマスキングテープのデザインも手掛けました。
ミュージアムでの美術鑑賞や、娘さんと一緒に読む絵本からインスピレーションをよく受けるそうで、今後の作品も楽しみです。
ヘイディさんの作品とお部屋に共通する、その優しい色使いや質感、温かみのある雰囲気は、きっとお人柄そのものを映し出しているのでしょう。
好きなものに囲まれた居心地のいいお部屋作りをすると、自然とその人の内面を映す鏡のようになるのだとヘイディさんのお部屋が教えてくれたような気がしました。
Photo & Text:きつね