ラプアン カンクリのプロダクトをお渡しして、
実際に2週間使っていただきました。
さて、その後の暮らしぶりはいかがですか?
Photo: Katja Lösönen
Translation: Satoko Tame
Edit & Text: Sumiko Ayata
ヒンメリとは、藁で作られる幾何学模様の美しいオブジェ。フィンランドを代表する伝統的な装飾で近年日本でも静かなブームになっています。ヒンメリアーティスト、エイヤ・コスキの作品は基本を重んじながらモダンなインテリアにも映えるデザインが特徴で、どこかラプアン カンクリのプロダクトにも相通じるものを感じさせます。
ラプアから約80km。人口50人という小さな村ヴァーサにある彼女の自宅兼アトリエへ向かうと、雪の中、お気に入りのブーツを履いて雪かきをしていたエイヤが手を振って迎えてくれました。
01. Living in small village
あなたの暮らしについて教えてください。
村民がわずか50人という小さく静かな村に、農夫の夫と二人で暮らしています。家は元々牛小屋でもあったファームハウスをリノベーションしたもので、展示会や滞在型のワークショップもここで開催しているの。
朝は夫の淹れてくれるコーヒーの香りで目が覚めます。下のキッチンから2階の寝室まで香りが漂ってくるのよ、最高でしょ。この温かな一杯が一日の始まり。食卓には、夫のオーガニックファームのライ麦を使ったお手製のパンやジャムが並びます。このパンを作るのに2日間かかったのよ。というのも、ホームメイドの酵母を使っているからなの。ファームの花と水から出来る酵母の香りは素晴らしいわ! とっても伝統的な作り方で、私の母もそう作っていたし、この匂いを嗅ぐと子どもの頃が蘇るよう。
日常のなかで自然の変化を味わったり、時間をかけて何かを作ったりすることがとても好きなんです。
棚に並んだポット(写真)が素敵ですね。
これはフィンランドのデザイナー、アンティ・ヌルメスニエミ(Antti Nurmesniemi)のもの。全部で24色あるんだけど、時間をかけて一つずつ集めていったのよ。60年代の貴重なものなんだけど、観賞用にせず毎日使っているわ。同じ形でも色ごとにテーブルの風景が変化するのが面白くて、新鮮な気分になるわね。
02. Style and thought
家のなかで一番好きな場所はどこですか?
もちろんキッチン! 日差しがたっぷりと入るキッチンで、何も考えずに手を動かしている時間が好きなの。夕暮れに本を読んだり、一人でお茶を飲んだりするのも。料理の途中に作品のアイデアが閃くこともあるのよ。
私はパンやスウィーツ作りが好きでよく作るんだけど、材料はほとんどが夫の畑から。小麦はもちろんオーガニックの種や花なんかも使うわ。採れたては味も香りも格別だし、彼が愛情を注ぐ大地の恵みを料理できる幸せも感じます。今日はフィンランドのシナモンロール、コルヴァプウスティを作ってみたの。カルダモンを練りこんだ生地にシナモンを巻き込んで焼く昔ながらのレシピでね。コーヒーと最高に合うわよ! そういえば、フィンランドはヨーロッパでコーヒーの消費量が一番多いそうだけど、このシナモンロールのせいじゃないかしら? (笑)
インテリアにラプアン カンクリのプロダクトが溶け込んでいますね。
ラプアン カンクリのアイテムは、この家で田舎暮らしを始めた時から使うようになったの。空間にさりげなくニュアンスを添えてくれる感じが好き。
お気に入りは、リビングのエッグチェアにかかっている黄色のブランケットと着物型のサウナガウン(日本未発売)。ブランケットは読書の時などに使うし、ガウンは軽くてリネンの肌なじみが素晴らしいの。毎朝使っているわ。特にシーツやキッチンタオルは使い込むほどに暮らしの一部になっていく、そんなところが一番の魅力だと思う。
そうそう、ラプアン カンクリのテキスタイルパタ―ンは、ちょっとヒンメリみたいじゃない? そう見えるのは私だけかしら。
あなたにとって家族はどんな存在ですか?
我が家は夫と二人。夫の存在はすごく励みになっています。彼のサポート無しでは私はヒンメリスト(ヒンンメリ アーティスト)になれなかったわ。経済学者からヒンメリストへ転身する決断をした時もそうだし、今なら、夜ベッドに入ってからアイデアが閃いて、急にアトリエへ抜け出すことがあっても彼は笑って応援してくれる、とかね。笑いと言えば、私たちはふざけることが好きで、今回の撮影中も突然タンゴを踊り出したり(笑)、彼との生活に笑いは絶えないわ。
……実は私、一昨年に癌と診断されたの。フィランドの病院での手術や化学療法を辞退して、スイスにある施設で自然療法を受けながらゆっくりと治癒してきたんです。おかげで今は元気よ。そこから、昨年の東京(GALLERY A4/ギャラリー エー クワッド)で開催された個展までの1年間で、人生の底から最高の出会いまでを夫と経験したと思う。人生は贈り物。日常は大なり小なり奇跡に溢れているわ。
03. Inspiration from nature
自然に近い暮らしに惹かれるのは何故でしょう。
この家は1950年代に建てられた古い建物で、周囲は森とライ麦畑に囲まれています。夫はオーガニックの農業を営んでいるし、常に自然を身近に感じる環境と言えるわ。この土地を選んだ理由は、四季の移り変わりを味わうことができるから。厳しい冬は、暖かい日々が来るのを静かに待ち、春は畑に種まき、夏に新緑の香りを浴び、秋は収穫に感謝する。中でも自然の豊かさが感じられる秋は私の一番のお気に入り。この時期に森の中を歩くと最高なの。キノコが大好きで、秋はキノコ狩りにほぼ毎日森へ。サラダの材料は買ったことがないの。外に出て、ワイルドなハーブを採ったらいいんだもの。北部では松茸も採れるのよ。パフュームのような芳醇な香りが素晴らしいわ。
04. Himmeli and feauture
開放感のあるアトリエですね。
アトリエには大きな窓があって、太陽の光がよく入ります。ここでは、自分だけの“静けさ”が得られるの。集中できる場所ね。
作品に関して言えば、伝統的な素材と色で作られるものがやっぱり好きだし、過去20年間、そういったものを作ってきたんだけど、最近は新しいクリエ―ションに挑戦しているわ。例えば、普通のライ麦の藁にヴィヴィッドな色を付けてみたり。この作品は長くて、天井から床くらいまであるわ。
クリエイティブな発想はどこから生まれると思いますか?
どこからかしら?(笑)ヒンメリの形は色んな場所で思いつくの。道を歩いている時だったり、布、教会、窓の外を見ている時だったり。目を閉じるとジオメトリー(幾何学)の模様が現れるのよ。この“ギフト(才能)”を持てたことにとても感謝しているわ。毎日の生活がインスピレーションだと感じるの。
あなたにとって、ヒンメリストとしてのゴールは?
それは、やはりヒンメリを世界中の人に知ってもらうことよ。20年前、毎週土曜日の夜にサウナの後、キッチンテーブルを使って始めた頃を思うと、昨年東京で開催された個展はもちろん、日本にヒンメリのコミュニティを持てるなんて夢のようよ。ヒンメリは私にとって広い世界へ繋がるドア。アメリカ、カナダ、スイスにも作品を待ってくれる人たちがいる。とてつもなく大きな目標に聞こえるけど、きっと実現するわ! ヒンメリのジオメトリックなハーモニーや純粋な美しさは、言語や文化を越えて心と心を繋げてくれると信じているから。
items
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MEHILÄISPESÄ / towel
- material
- 100% washed linen
- size, price
- 48x70cm ¥2,800
- color
- 28557 15 / blueberry
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ESKIMO / blanket
- material
- 100% wool
- size, price
- 140×180 cm + fringes ¥23,000
- color
- 100606 6 / pistachio
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CORONA / blanket
- material
- 100% wool
- size, price
- 130x170cm + fringes ¥22,000
- color
- 100499 9 / grey-black
profile

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004
エイヤ・コスキEija Koski